小児喘息 8歳の時点で残っている肺機能が成人喘息への移行を予測する
こんにちは、院長の面家です。
先日のアレルギー学会の講習会を受講する中で気になる論文があったので、ちょっと読んでみました。
ハーバード大学からの報告で、北米の小児喘息の患者さんの肺機能を検査して、その肺機能がどれくらい維持できているかが成人期喘息への移行と寛解(病気が落ち着いて症状がない状態)との見極めに重要であるという論文でした。
重要なのはこの図となります。呼吸機能は大きく2つに分けられ、肺が膨らめない状態(拘束型障害)と空気の通り道が狭くて息を吐きづらい(閉塞型障害)があります。喘息は息が吐きづらい病気です。そのため普段も気管支拡張剤を使用していますよね。
図のFEV1/FVCというのは肺の大きさに対して、どのくらい息が吐きやすい状態にあるか、という数値になります。これは右側のように80%以上で維持されている人と、左側のように80%未満と障害が強く残っている人とで大きくわけて比較しています。下の棒グラフは濃い黒が寛解(症状改善)を示していますので、呼吸機能が80%以上残っていると53%以上が成人期にはよい状態であることが示されています。そして最終的に一番右下のようにserum eosinophilis(血液検査での好酸球:アレルギー炎症に強い関連を示している白血球細胞のひとつ)の数も抑え込めていると82.6%もの患者さんが成人期に寛解を迎えています。
一方で8歳で肺機能が80%未満の人は7割以上のひとが成人期にも喘息症状を認めることが予想されるというものです。75%未満では90%以上の方が喘息が残ってしまいます。
私たち小児科医は小児期を担当しますが、丁寧に診療しないと問題を成人期に持ち越してしまう可能性が示されました。もちろん治療介入して改善したら成人期にどうなるのか、などの臨床研究の結果を待たなければいけませんが、のんびり待っているわけにはいかないでしょう。こういった検査も行いながら管理していく必要があると感じています。
では。