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成人先天性心疾患

[2019.03.06]

成人先天性心疾患、見慣れない言葉だと思います。「成人」大人なの? 「先天性」こどもなの? など実はまだ医師の中でも浸透しきっていない言葉です。

 

小児領域の移行医療(移行期医療)というのは大きな社会問題になってきています。医療が進歩し、小児期に発症する難病への治療が開発されてきました。一部の病気は完全に治しきることができるのですが、小児心臓病(先天性心疾患、川崎病、心筋症、不整脈など)はほとんどが完全に治しきることができず、定期的な診察、投薬、入院などが必要となります。これは神経疾患、発達関連など小児医療のさまざまな領域に渡る重要な問題となります。心筋症や不整脈は比較的成人の先生(心臓だったら循環器内科の先生)に移行しやすいのですが、先天性心疾患や川崎病は難しい状況が続いています。

 

それは循環器と一言でいっても、内科の先生は「心筋梗塞などの冠動脈疾患」「高血圧などの生活習慣病」「後天性(加齢などによって生まれたあとに発症する)弁膜症」などが得意であって、「先天性心疾患」は得意ではありません。私たち小児科医は「先天性心疾患」は得意ですが、内科の先生の得意分野はあまり得意ではありません。

 

一般の方のイメージ

実際の得意分野

また内科にかかる患者さんの年齢層は比較的高いため、若年成人と呼ばれる10代後半〜40歳くらいまでという年齢層は一般に元気なので慢性病で病院にかかることは少なく、対応が難しいというのがあります。

 

成人先天性心疾患は右上の領域であり、まだ専門家が少ない

以上から先天性心疾患を有する患者さんが成人期に達すると専門でみる医師は極端に減ってしまうのです。しかし問題は山積みです。なぜか、高校生や大学生でも運動部やサークルで運動を行うので、その際の運動の可否の判定、職業の内容と心疾患の判定、女性の場合は妊娠・出産時の心機能評価など小児期や高齢になった時期とは異なる問題があります。

 

また通院についても問題があります。心疾患は内部障害であるため、服を着ていると病状が伝わりにくいです。就職したての方の場合はまだ職場で立場の弱い状態ですが、定期的に休んで病院に行くのに理解のある職場や、人数に余裕のある職場であれば良いですが、必ずしもそのような職場ばかりではありません。

 

病院としての診療体制

今回、私が開業しようと思った理由の一つがここにあります。私が岐阜県総合医療センターで行っていた成人先天性心疾患診療は火曜日限定でした。そのため必ず学校や職場を休み受診するしかありませんでした。学校帰りに受診できるように、あえて夕方遅くまで外来を行ったこともありましたが、病院全体としてのルールもあるため断念しました。違う曜日などに対応したこともありましたが、他の検査などの業務も多く、全ての患者さんに提供することはできませんでした。

 

そこで「気軽に通える専門医」をテーマとして、入院や大きな検査は岐阜県総合医療センターで行っていただきますが、症状が比較的安定しているときは当院に通っていただき、「病気」と「社会生活」を両立していただきたいと思いました。どちらも大事です。でもどちらかではないと思います。当院で行った検査の情報などは紹介状やデータの形で岐阜県総合医療センターと共有し、緊急時や検査時などに問題が無いように務めます。

 

長文になってしましましたが、困ったことがありましたら、「病気」と「社会生活」の両立を目指し、「気軽に通える専門医」にどうぞご相談ください。

 

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